建築を、物理的なものや空間的な目でみるのではなく、「制度」でみる視点が僕にとって斬新でした。制度という視点でみると、なるほど壁や天井、床や柱、窓や扉の存在が消えて見えます。建築を考えるときは、自然と外部と内部の境界線に意識がいくのですが、境界線そのものをつくっている要素ではなくて、境界線を生み出すであろう根源の存在に注意を向けてみるということですね。
保健室が学校制度と異質の制度でできているという事に気が付きませんでしたよ。当たり前の事だと思っていました。小中高時代の保健室を思い出すと、教室よりは狭い部屋ですけど教室と同じように、四角く区切られた部屋でしたね。教室と、壁のあり方は同じ様なものでしたが、勉強机がないことや、ベットがあってカーテンがあったりと、その部屋にどのような家具や道具が置いてあるかで部屋の用途が保健室になっていましたね。外との位置関係の違い以外がほとんど同質な場合は、部屋の質は家具一つで変えられる事もあるということでしょうか。
お話しに出て来た学習机は、学校制度を自分家に持ち込むキッカケをつくっている点では、保健室と同じような機能を果たしていますが、保険「室」と比べて領域性を持った境界線が透明化されたイメージを持ちました。「室」のように「囲まれている」という感覚よりも、光のような帯状の領域に入り込んでいるという感覚です。うーん、例えて言うなら懐中電灯そのものが学習机で、懐中電灯が放つ光が学習机の上で繰り広げられる行為を促す雰囲気です。
ある部屋に学習机をポンッと置くと、机を置いた周辺が勉強の場になるということですよね。学習机が、その机を取り囲む空間をさらに細かく分節しているように見えてきますね。
これ、石上純也さんの「神奈川工科大学KAIT工房」が持つ雰囲気に似ている気がします。柱の配置間隔や方向が一室空間の領域をゆるやかに分節していると思いますが、そこに、テーブルや椅子、どんな道具を持ち込むかによって、その場が工房から別の場にも変容できます。空間を使う人の操作が加わって機能が与えられるというか。家具によって制度の中に制度を持ってこれるのですね。なんという繊細な空間。
この場合、主張の少ない静的な場に目的意識が強いものを置くことで、主張が少ない方が薄れて行くという処理が行われていますね・・・。あー、違う、柱が1本だけあると存在感がありますが、柱を連続的に配置すると、柱単体の存在感が薄れます。学校と保健室の関係でみると、学校の機能の方が繰り返し連続していて、保健室は、その連続性の中のものと比べると異質です。より多い存在が、より少ない存在を強調しているわけです。僕達は集団行動をするにあたって多数決というものを尊重して行動していることが多いですが、少ない方が勝っているという見方は、面白いものです。
対象が建築でなくても、道路に面した店先に丸椅子とテーブルを置けば屋外に増築された部屋のようなものが出来ている光景は街中でも見られますね。道路という車の為の制度でできている場所に家具を置くだけでカフェにもなると。制度の中に挿入された制度って、規定の制限を打ち破るようで、なんだかワクワクしますね。「当たり前だと思っていることが、実は当たり前ではない」という山崎さんの言うようなことに気づけるかどうかで、ワクワク感が感じられるかどうかに影響がありますよね。山崎さんは保健室にワクワクしたのですね(笑)。
空間に家具を置く方法ではなくて、もっと他のもので制度の中の制度ってつくれないものでしょうか。空間とか、壁に囲まれた部屋というと、何かをするにも「手がかり」がないです。そこに家具や道具が持ち込まれると、手がかりになります。大きなスケールの中に、自分が把握しやすいスケールを認識した時に空間の特徴というか、制度を認識するのでしょうか。「制度」を切り替えるのは、あるスケールを持った存在ということかな?
最後の、家と住宅という呼び方については、従来の建築に携わる人のような目じゃない視点で建築を見ているという印象を持ちました。「住む所」という表現は、明らかに従来の建築を構成する壁や床に疑問を投げ掛け、住む人側の現実的な望みを知っている雰囲気を感じました。
山崎さんのインタビューでは、「面白い」という言葉が沢山でてきましたね。本当に建築を考えることが好きなんだなあと思います。
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ラヂオは友の
「でしゃばり目次」
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山崎泰寛インタヴュー
「建築外からのモチベーション 保健室から建築へ」
00:33〜「建築活動のモチベーションは?」
01:32〜「保健室って?」
02:22〜「学習机と制度」
04:26〜「制度の中の制度」
04:40〜「葛藤する家具」
05:43〜「保健室が建築として面白い理由」
07:54〜「皆が当たり前と思っていることが、別に当たり前じゃない」
08:55〜「研究以外の方向へ向かった理由」
09:56〜「建築のことを誰も知らない」
11:38〜「建築の伝え方について」
14:29〜「とびらプロジェクトから考える事」
17:05〜「シンポジウムで別の視点を建築にもつ」
19:10〜「編集者としての仕事」
21:10〜「建築が山崎さんを惹き付ける理由」
24:40〜「家と住宅」
(全 28:17)
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保健室が学校制度と異質の制度でできているという事に気が付きませんでしたよ。当たり前の事だと思っていました。小中高時代の保健室を思い出すと、教室よりは狭い部屋ですけど教室と同じように、四角く区切られた部屋でしたね。教室と、壁のあり方は同じ様なものでしたが、勉強机がないことや、ベットがあってカーテンがあったりと、その部屋にどのような家具や道具が置いてあるかで部屋の用途が保健室になっていましたね。外との位置関係の違い以外がほとんど同質な場合は、部屋の質は家具一つで変えられる事もあるということでしょうか。
お話しに出て来た学習机は、学校制度を自分家に持ち込むキッカケをつくっている点では、保健室と同じような機能を果たしていますが、保険「室」と比べて領域性を持った境界線が透明化されたイメージを持ちました。「室」のように「囲まれている」という感覚よりも、光のような帯状の領域に入り込んでいるという感覚です。うーん、例えて言うなら懐中電灯そのものが学習机で、懐中電灯が放つ光が学習机の上で繰り広げられる行為を促す雰囲気です。
ある部屋に学習机をポンッと置くと、机を置いた周辺が勉強の場になるということですよね。学習机が、その机を取り囲む空間をさらに細かく分節しているように見えてきますね。
これ、石上純也さんの「神奈川工科大学KAIT工房」が持つ雰囲気に似ている気がします。柱の配置間隔や方向が一室空間の領域をゆるやかに分節していると思いますが、そこに、テーブルや椅子、どんな道具を持ち込むかによって、その場が工房から別の場にも変容できます。空間を使う人の操作が加わって機能が与えられるというか。家具によって制度の中に制度を持ってこれるのですね。なんという繊細な空間。
この場合、主張の少ない静的な場に目的意識が強いものを置くことで、主張が少ない方が薄れて行くという処理が行われていますね・・・。あー、違う、柱が1本だけあると存在感がありますが、柱を連続的に配置すると、柱単体の存在感が薄れます。学校と保健室の関係でみると、学校の機能の方が繰り返し連続していて、保健室は、その連続性の中のものと比べると異質です。より多い存在が、より少ない存在を強調しているわけです。僕達は集団行動をするにあたって多数決というものを尊重して行動していることが多いですが、少ない方が勝っているという見方は、面白いものです。
対象が建築でなくても、道路に面した店先に丸椅子とテーブルを置けば屋外に増築された部屋のようなものが出来ている光景は街中でも見られますね。道路という車の為の制度でできている場所に家具を置くだけでカフェにもなると。制度の中に挿入された制度って、規定の制限を打ち破るようで、なんだかワクワクしますね。「当たり前だと思っていることが、実は当たり前ではない」という山崎さんの言うようなことに気づけるかどうかで、ワクワク感が感じられるかどうかに影響がありますよね。山崎さんは保健室にワクワクしたのですね(笑)。
空間に家具を置く方法ではなくて、もっと他のもので制度の中の制度ってつくれないものでしょうか。空間とか、壁に囲まれた部屋というと、何かをするにも「手がかり」がないです。そこに家具や道具が持ち込まれると、手がかりになります。大きなスケールの中に、自分が把握しやすいスケールを認識した時に空間の特徴というか、制度を認識するのでしょうか。「制度」を切り替えるのは、あるスケールを持った存在ということかな?
最後の、家と住宅という呼び方については、従来の建築に携わる人のような目じゃない視点で建築を見ているという印象を持ちました。「住む所」という表現は、明らかに従来の建築を構成する壁や床に疑問を投げ掛け、住む人側の現実的な望みを知っている雰囲気を感じました。
山崎さんのインタビューでは、「面白い」という言葉が沢山でてきましたね。本当に建築を考えることが好きなんだなあと思います。
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ラヂオは友の
「でしゃばり目次」
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山崎泰寛インタヴュー
「建築外からのモチベーション 保健室から建築へ」
00:33〜「建築活動のモチベーションは?」
01:32〜「保健室って?」
02:22〜「学習机と制度」
04:26〜「制度の中の制度」
04:40〜「葛藤する家具」
05:43〜「保健室が建築として面白い理由」
07:54〜「皆が当たり前と思っていることが、別に当たり前じゃない」
08:55〜「研究以外の方向へ向かった理由」
09:56〜「建築のことを誰も知らない」
11:38〜「建築の伝え方について」
14:29〜「とびらプロジェクトから考える事」
17:05〜「シンポジウムで別の視点を建築にもつ」
19:10〜「編集者としての仕事」
21:10〜「建築が山崎さんを惹き付ける理由」
24:40〜「家と住宅」
(全 28:17)
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