「高松研究室作品展「the horizon」公開収録」の感想です。 -[r4(思ひ出のコメント:2009.12.26)]- - 建築系ラジオ
出演者:武智仁志

■皆さんへの印象について

梅林さんは体育会系、学生さんは、修行者のような雰囲気を持っていますね。平野さんは、知的な声質をされていて、なのに毒舌(笑)です。最後までハッキリと批判はしませんでしたが、それを言えるというのは、自分達がやっていることに対して揺るぎない絶対的な自信と信念があるがゆえでしょう。

メインストリーム。有名になった人の発言や行動へは、素直に尊敬する気持ちと、裏腹にそれを超えたいという欲望がわくものです。出来たものに対して批判することは簡単ですが、自分がそれを上回る提案ができるか否かが重要で、高松研の皆さんは、その可能性を十分に持っているのではないかと思います。


■言語化できないもの

「言語化できないもの」は非常に魅力的に感じます。共有感があって、それは、視覚的、触覚的な他の感覚を総動員してコミュニケーションしているイメージがあります。

武道も宗教的な感覚があります。師匠という絶対的な目標があって、半分は催眠術にかかっている状態で稽古をするものになっていると思います。師匠の説明は、「相手がバーンときたら、パーンと切り返して・・・」と言葉だけでは説明できない動作を示しながら説明しています。言葉だけでは分からないですが、なんと言いますか、師匠に対する信頼感とか、思想的な同意というか、なにかを常に共感できているという感じを日々の稽古で受けていました。(ものごとが続かない質なので、過去形です・・・。)

高松研の皆さんも、同じような感覚なのかな?と聞きながら思いました。師匠の鉛筆を削って授業を待つところなんかは、よく表れていると思います。絶対的な存在なんです、きっと高松さんは。

繰り返すことによって頭ではなく、体に焼き付けた所作は、無意識の状態でも繰り出せるものだと思います。それを、ドローイングの斜め45度を繰り返すことで得ているのでしょうか(笑)。寝ながらでもドローイングできるかもしれませんね。斜め45度の真っ黒な平面から建築が立ち上がる感覚は、高松研の皆さんにしか理解できないことなのでしょう。

NHKで見た、エンツォ・フェラーリをデザインされた奥山清行さんのドローイングも驚愕でした。ものの15分で仕上げたドローイングで決まったらしいです。無意識で描ける領域でないとそのスピードとできたものへの共感は得られにくいのかなと思いました。

「共感」というものは、感覚を鍛えている人間のみではなく、まったく専門外の人の心もつかんだ時に得られるというのが不思議でなりません。専門ならまだ理解できても、なぜ鍛えていない人も「良い」という判断を下せるのでしょうか?経験を通り越していきなり感覚を得ることが可能ということですよね・・?DNAに何かが刻まれていて、そのデータベースからモンタージュ写真のように検索して一瞬のうちに「良い」と判断できる源を誰しも持っているということでしょうか・・・。

建築を見に行った時に、写真だと気軽にバンバン撮って、あとで整理しようとするのですが、構図も考えて撮っていないので、ただのカタログ状態になることが僕の場合よくあります・・・。スケッチの場合ですと、描く為に細部も確認しないと絵ができないので、自然と細かい所まで生の空間で確認します。描き始めや、出来上がりの構図も考えて写真よりも慎重に絵を決めています。そして、なんといっても後で印象に残りやすいです。体も一緒に動かすことによって、経験度が高まるんでしょうね。


■フォルムについて

自転車が好きで、自転車を2台、(ロードタイプとマウンテンタイプ)持っていた時があります。好きなものというのは、その「形」もたまらなく好きです。独身時代は、部屋の中で管理していたので、ボーっと眺めることもあったのですが、そのフォルムがまた、たまらないんです。形があるものは、無いものよりも理解しやすく、愛でる対象として扱いやすいです。ザハ・ハディッドの建築も、フォルムやラインがかっこよくて、たまらないですね。

考えてみると、フォルムがある建築は、外の世界との関係性が弱くなると仮定できませんか?フォルムがない建築は、空間が解体されていて隙間が生まれ、新しい空間の可能性を秘めているように思います。そういう隙間を高松研の方達は、手抜きのような、ユーザーまかせでプアな空間とも感じていることもあるのではないでしょうか。(ラジオではモダニズム的なシンプルな建築を指していたと思いますが、隙間をも許さない感じを受けました。)閉じたフォルムの建築だと、公共的なイメージを持てない感じがします。開いていないような。あっ、それで巨大化していくのでしょうか。でも、フォルムがカッコいい建築は、これがまた、「たまらない!」と思ってしまうんですよね。

うーん、どっちが良い悪いとは言えないのですが、見るものとしてはフォルムがある方が良いです。車も同類になるでしょう。そう、コレクションしたくなる感じです。ただ、集合体としてみると、異様な空気感を漂わせる気がします。

さ、ドローイング、ドローイング!っと行きたいところですが、
今からお使いです・・・(笑)。

・関連項目
高松研究室作品展「the horizon」公開収録1
建築の地平1 展覧会とその意義

高松研究室作品展「the horizon」公開収録2
梅林克氏が語る京都の建築

高松研究室作品展「the horizon」公開収録3
京大学生の卒業設計

高松研究室作品展「the horizon」公開収録4
討議 建築の地平2

PD02: [先行配信] 〈建築の地平〉ハイライト
「《原始》を超えて《根源》へ―京都から東京に向けて放たれた、大いなる問題提起」

(2010年6月16日公開)

連載紹介

建築系ラジオのリスナーによる感想コーナーです。 気になってるけど、まだ聞いていないコンテンツの概要を知りたい場合に参考でどうぞ。感想文のリクエストがあれば、お答えいたします(笑)。
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