山梨知彦さんからの審査講評文 - 建築系ラジオ

山梨知彦さんからの審査講評文
キルコス国際建築設計コンペティション2014

出演者:山梨知彦

キルコス国際建築設計コンペティションでは、20組の審査員一人ひとりが、金賞・銀賞・ 銅賞・佳作を選定する国際建築設計コンペティションです。多くの作品を選定するのは、そのアイディアを見逃さないことで、建築の可能性を広げられるのではないか。そう強く信じるからです。またコンペティションが終わっても、一人ひとりの審査員が、どの作品を、どう評価したのかを見られる仕組みをつくることで、すべてのひとが建築について深く考えられます。私たちが目指すのは、多くの表現を通して建築の未来を考えられる空前絶後のアイディアコンペティションです。 後援している建築系ラジオでは、20組の審査員からの講評の収録を配信します。審査結果だけからではなく、一人ひとりの審査員の価値観がわかる、キルコス国際建築設計コンペティションならではの、見る見られるの感覚をお楽しみください。(北川啓介) 

ざっと見るとテーマのあるコンペとは思えないほど多様かつ多数の案が集まり、申し訳ないことだがすべての案を詳細に読み込むことが不可能に思われたので、最初にいくつかの「ふるい」を設け、読み込む案を絞り込むことにした。
最初のふるいは、いわゆるダイヤグラムやアイデアの提示に留まっており、建築という表現に達していると思われないものを、直感的にふるい落とした。
2つ目のふるいは、アイデアはユニークなもののテーマとはかい離していてかつそのズレが自覚的でないものが多かったので、それらをふるい落とすことにした。
ここで少々気になったのは、ほかのテーマのコンペで作成したプレゼンを焼き直したのではないかと思われる提案が散見されたこと。僕の誤解かもしれないけど。
最初は多彩に見えた応募案が、特に美しいプレゼンで目立っていたものが、この段階でほとんど落ちてしまい、意外なことに比較的少数の案に絞り込めてしまった。
同時に、応募案のパターンも見え始めた。
求めるテーマが「軽いこと/重いこと」と、二項対立的にとらえやすいこともあってか、それを単純に図式的にとらえ、図式の提案となっているもの(最初のふるいで落とさせていただいた)。
次はその対立の図式を、即物的に置き換えたタイプのもの。内部アクティビティ等がトリガーとなり、建物自体の荷重が増減する状況を、物理的な浮き沈みや、水面の上下で可視化する類の案である。この攻め方がいけないとは思わないが、誰もが思いつくアイデアを形にするのであれば、そこに執拗な熱意や洗練など、膨大なエネルギーを注いだ建築化するためのプロセスが必要なはずだが、アイデアコンペということもあり、それに見合った情熱のほとばしりを感じる案はなく、これが3番目のふるいとなった。面白かったのは、三匹の仔豚の藁の家、木の家、煉瓦の家の引用が散見されたこと。残念ながら、引用に留まり、再解釈や昇華が見られず、これもふるいの一つになった。
こうしたプロセスを踏んでいるうちに、「軽いこと/重いこと」は二項対立的で固定的であるというよりも、むしろ2つの概念は常に連続しており、関係は相対的であり、事の本質は重さをどうとらえるかという点に、審査をしつつ興味が移行していった。これは例えば、最新の生物学において、本能と理性とを二項対立的にとらえるのではなく、どんなに理性的に見える人間の活動の中にも本能的な判断は内包されているし、どんなに本能的にとらえられるプリミティブな生物の反応であってもそこには理性的な何かが介在しており、もはや本能と理性を対立的にとらえるよりも、連続したつながりを持ったものとして捉えることで、人間から生物までを見通す広範な視座を獲得できるとしている考え方に近いかもしれない。特に、144や014が提示している、記憶の重さという概念が、「軽いこと/重いこと」というテーマを二項対立的ではなく、重さの連続的変化としての読み直しを示唆してくれたように思えた。
こういう視点から、いくつかの気になる作品をピックアップしてみたのが、014,144,173,189,225,241、279,333,339であった。
この中で、225は応募案の中では異色にも思えた。しかし、変化を、建物自体を動かすことなく、最小限の工夫で建築にもたらす視点は、多くの場合に効果的で、感動を呼部。建築を造るうえでの基本的戦略の一つである。。光を重さに置換する視点は美しい。プランや光に対する姿勢が中野本町の家を連想させるとの指摘もあるかもしれないが、僕には十分なオリジナリティがある案に見えた。
こんなことを思いつつ、ピックアップした案のなかから、014,144,225の三案を上位として、173,189,241,279,333,339を佳作とさせていただいた。
上位三案の順位は、申し訳ないが私の中では僅かであり、再び最初の直感に戻り、序列を次のように決めた。
金賞:144、銀賞:225、銅賞:014
以上(日建設計・山梨知彦)

・出演者プロフィール
山梨知彦(やまなし・ともひこ)
建築家 ◎1960年、横浜に生まれる。1984年、東京芸術大学建築科卒業。1986年、東京大学大学院修了。日建設計に入社。現在、執行役員、設計部門代表。 ◎代表作:「ルネ青山ビル」「神保町シアタービル」「乃村工藝社」「木材会館」「ホキ美術館」「ソニーシティ大崎」ほか。◎受賞:「日本建築大賞(ホキ美術館)」、「日本建築学会作品賞(ソニーシティ大崎)」ほか。 ◎書籍:「業界が一変する・BIM建設革命」「プロ建築家になる勉強法」ほか。

・関連項目
キルコス国際建築設計コンペティション
(2014年12月25日公開)

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